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ロハスな日々 vol.7
2006.11.21(火) 建築工房 羅漢  馬越 健一

山のカキ と 海のカキ

5日程前のことですが、現場の配筋検査を終えて電車での帰路、夕暮れ時だったこともあり、電車に揺られながら、今夜の晩飯のことなど呑気に考えていたら、「柿」ではなく「牡蠣(カキ)」が頭に浮かんで離れなくなり、牡蠣フライもイイけど、鍋も捨てがたいしなどと考えつつも、駅に着く頃には、今夜は、「牡蠣のベーコン巻きに白ワイン」に決定していました。改札を出たところにあるブックファースト(本屋)にちょっと寄り道しようと入って、目に飛び込んできた文字は、「牡蠣礼賛」。谷崎潤一郎の「陰影礼賛」は読みましたが、何と安直なパクリ。と思いつつも、あまり内容を確認もせず思わず購入してしまいました。
ところが、なかなか、面白い内容でした。牡蠣の養殖技術の発展に寄与した方々の話や、世界の牡蠣知識など、勿論ノンフィクションです。
日本の牡蠣の養殖技術はまさに世界一で、世界一の牡蠣生産国であり消費国のフランスの牡蠣も、稚貝の段階までは宮城県で養殖され輸出されているそうです。沖縄出身の宮城新昌という人が、明治時代に単身アメリカへ渡り、牡蠣養殖の勉強をし、研究をし、カナダで市民権を得て、会社を起こし、宮城県で事業をおこされたそうです。この人の偉いところは、養殖の技術の特許を取らず、言ってみれば、タダで技術を教えていたそうです。真珠の養殖で有名な御木本幸吉は、その莫大な特許料で財をなしたことを思えば、もったいない気もしますが、現在の日本の牡蠣の養殖技術の発展は、この無欲のなせる技なのかも知れません。
もう一つ、この本の作者の畠山重篤さんという方も牡蠣の養殖業を営んでおられるのですが、そのかたわらというよりも、その一環として「森は海の恋人」という植林運動をされているそうです。ちょっと言うのが恥ずかしくなるようなネーミングですが、海を豊かにするのは、山の腐葉土などの養分だそうです。
本を読みながら、中島社長の話を思い出していました。山が荒れれば、その下流に影響がでるということは、こういうところにもでてくるのだと痛感しました。日本はとても細長い国土なので、山から海は本当に近いです。海彦山彦、海族山族、などと対立の形態ではなく、一体に考えるべきだなあと思いました。

加子母の富士山柿もおいしそうだけど、瀬戸内海赤穂の牡蠣もおいしいですよ。
by npskobe | 2006-11-21 17:57
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