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復元された「隠居」
2006.10.27
こんにちは りきさんです。
今日は、10月14日に引渡しをしたS邸増築工事について書いてみます。
Sさんは、72歳です。少し前のブログに登場していただきました「120歳まで元気で生きる」という大きな目標を抱いてみえる人です。
 物を大切にする。使えるものは、捨てないでとっておく。いつかは、役に立つときが来るだろうから 大きなものも 小さなものも 大切にとっておくという人です。
 Sさんの お父さんの建てた「隠居」、立派な和室と縁側のついた離れがありました。その離れの隣には、Sさんのお父さんの植えられた立派な松の木もありました。Sさんは、松の木の手入れも自分でするという人です。自分で手入れする松の木だから松の木への愛情も強いものがあります。松の木の隣には、小さな池があります。池も自分で管理する大切な 大切な池です。
 Sさんは、その離れのあるところに車庫を建てようと計画されました。でも、車庫を造ったら離れの立派な「隠居」は、なくなってしまいます。松の木は残さなければなりません。池もそのまま残さなければなりません。そこで、考えられたのが、池と松の木はそのまま残し隠居だけ空中に吊り上げてその下に車庫を造ろうという計画でした。車庫ができたらそのまま宙に浮いている隠居を車庫の上において完成。一階が車庫で、二階が隠居。
 しかし、現実には、「隠居」を吊り上げることは無理でした。
 妥協策は、隠居を復元できるように解体して、その敷地に鉄骨の車庫を造る。その車庫の二階にもとあった隠居を復元する。というものでした。
 今年の4月に着工し 10月14日に完成しました。
完成した車庫の二階には、解体する前の隠居がそのままありました。天井板、鴨居、敷居、障子、襖、板戸、縁側の床、たたみ、そのままに復元されました。
 和室の障子を開けたら 立派な枝振りの松の木がありました。松の木は、復元された隠居の和室から眺められるのを待っていたかのように 喜んでいるように見えました。
 Sさん、設計士さん、監督さん、大工さん、そのほかの職人さん、本当にお疲れ様でした。
 新しいものだけで、建築物を造るのも それは、それでたいへんなものです。古いものを使って 前にあったように復元するのもたいへんなものです。
 S さんは、とっても喜んでみえました。
 私は思いました。「本当にSさんは、120歳まで元気で生きられる。」
 このようにして 思いでも残し、物も残す。新しいものだけではできない空間がそこに感じられました。
 またひとつ 中島工務店の作品ができました。
 是非、機会があれば作品を見ていただきたいと思います。
  
                                        河村力三
by npskobe | 2006-10-27 20:50
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